リファレンスチェックでは履歴書や面接だけでは把握できない情報を得られるため、候補者の人物像をより明確に確認できます。
しかし、前職でのトラブルや経歴詐称など隠したい事実がある、または何らかの理由で推薦者を選定できないといった理由で、なりすましを行う候補者もいます。
リファレンスチェックを行う際は、候補者にその必要性をきちんと説明したうえで推薦者の選定方法について柔軟に対応する、推薦者の本人確認や在籍確認を行うなどの対策が必要です。
この記事では、リファレンスチェックでなりすましが起こる理由や対策方法、見抜き方を解説します。
リファレンスチェックで注意すべき「なりすまし」とは

リファレンスチェックにおける「なりすまし」とは、採用候補者(以下候補者)が推薦人になりすましたり、自身の都合の良い人物に推薦者としてなりすましてもらう行為を指します。
リファレンスチェックでは候補者の前職、または現職で一緒に働いたことがある人物に、候補者の働きぶりや人となりなどをヒアリングします。
履歴書や職務経歴書、候補者との面接では知りえない情報を得られるメリットがある一方、候補者によっては第三者を通して自身の経歴を確認されることに不安を感じる場合もあるでしょう。
こうしたリファレンスチェックへの不安からなりすましを行ったり、なかにはリファレンスチェックそのものを拒否したりする候補者もいます。
リファレンスチェックでなりすましが行われた場合、採用する企業側は候補者に対して正しい評価ができなくなってしまいます。正しい評価ができなければ、リファレンスチェックの導入目的である採用ミスマッチや早期離職の防止、リスクヘッジなどの効果が十分に得られない可能性があります。
リファレンスチェックでのなりすましは2パターン
リファレンスチェックでのなりすましには、主に2つのパターンがあります。
候補者自身が推薦者になりすます
前職または現職で何らかのトラブルがあり、上司や同僚に推薦を依頼できない、または経歴を詐称しているといった理由で候補者自身が推薦者になりすますケースです。
都合の悪い事実の隠ぺいだけでなく、経歴や実績を過大に評価するなど採用に有利に働くよう情報を操作しようとすることがあります。
メールや書面でやりとりを行う際は、文章の書き方などが自己紹介や自己PRの文章の書き方と似ていないか確認してみましょう。近年ではchatGPTといったAIを用いて、巧妙になりすましを行う人もいるため注意が必要です。
適切ではない人物(友人・知人)を推薦者に指定する

リファレンスチェックの推薦者には、主に前職や現職の上司や同僚を指名します。しかし、なかには知人や友人に依頼して情報を操作しようと考える候補者もいます。人事に詳しい、または採用希望の企業と同業種の友人・知人がいる場合、採用に有利になるよう働きかけるよう依頼することもあります。
また、リファレンスチェックの普及に伴い、代行業者による推薦者のなりすましも増えてきています。とくに電話でのリファレンスチェックには注意が必要です。
リファレンスチェックでなりすましが行われる3つの理由
リファレンスチェックでなりすましが行われる理由には、次のようなものがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
現職に内緒で転職活動をしているため
現職に転職活動について知らせていない場合は、推薦者を出すことができないでしょう。現職に内緒で就職活動をしている理由は候補者によってさまざまです。なかには人材不足などを理由に、現職の上司から退職を強く止められているケースもあります。
このようなケースの場合、たとえ候補者が転職活動を正直に伝えたうえで上司や同僚に推薦者を依頼したとしても、候補者に不利な回答によって正当な評価を得られない可能性があります。
依頼できる推薦者がいないため
前職の辞め方が悪く連絡が取りづらい、前職・現職での人間関係が悪い、職場でトラブルを起こしたことがあるなどの理由から、依頼できる推薦者がいないケースもあります。
また、候補者が前職・現職で役職の場合、役員である上司に依頼しにくい場合もあるでしょう。
経歴を詐称しているため

経歴やスキル・保有資格の詐称など、履歴書・職務経歴書と事実が異なる場合は、都合の悪い情報を遮断するためになりすましを行います。
経歴の詐称は最終学歴の詐称や転職回数、職務経験の有無などさまざまです。実績を誇張している場合もあるでしょう。面接での事実照合や確認書類(卒業証書など)の提出を求めることで、経歴詐称を見抜くことも可能です。

リファレンスチェックで有効ななりすまし防止対策
リファレンスチェックでのなりすましを未然に防ぐには、次の3つの方法が有効です。それぞれ詳しく説明します。
候補者の懸念事項を事前に確認しておく
最近では導入する企業が増えているリファレンスチェックですが、日本ではまだなじみが浅く、その選考プロセスや目的について正しい認識が浸透していないのが現実です。
エン・ジャパン株式会社『ミドルの転職』の調査によると、リファレンスチェックを知っていると回答した35歳以上のユーザーは44%で、そのうち内容も含めて知っていると回答したのは21%でした。(※1)
リファレンスチェックを身辺調査、いわゆるバックグラウンド調査と混同している場合も多く、候補者によっては過剰に拒否反応を示したり不安を感じたりする人もいます。そういった誤解を解くためにも、企業側はリファレンスチェックについて「前職での勤務態度や働きぶりを確認するためのもの」であることをきちんと説明しましょう。
そのうえで候補者の懸念事項を確認し、不安を取り除いてあげることが大切です。
(※1)エン・ジャパン株式会社:ミドル世代に聞く「リファレンスチェック」実態調査
―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―
候補者が依頼しやすい推薦者を選べるようにする

候補者が依頼しやすい推薦者を選べるよう、依頼先のハードルを下げることもなりすまし防止につながります。企業側から推薦者の条件を細かく指定している場合、その条件に該当する推薦者を指定できずになりすましをしてしまうパターンも考えられます。
たとえば「現所属先の部署・チームでの上長2人」など限定的な条件で指定すると、該当人物と折り合いが悪い、転職を反対されているなどの事情があった場合、候補者は依頼先を失ってしまうでしょう。推薦者の選定条件については、候補者と相談するなど柔軟な対応を心がけましょう。同僚や前に所属していた部署の上司・同僚など、依頼先を広げることで推薦者も選定しやすくなります。
推薦者の在職確認をする
候補者が指定した推薦者が実際に在籍しているかどうか確認することも、なりすましを防ぐ方法のひとつです。
たとえば指定された推薦者が前職の上司だった場合、前職に直接連絡を取ってその人物が実際に在籍しているか、推薦者の所属先や役職に間違いがないかを確認します。
リファレンスチェックでのなりすましを見抜く方法
リファレンスチェックでのなりすましを見抜くには、推薦者本人であること・候補者の現職・前職に実際に在籍していることを確認することが重要です。
推薦者に本人確認書類を提出してもらう

まずは推薦者に本人確認ができる身分証明書を提出してもらいましょう。身分証明書は免許証やパスポート、社員証など、顔写真付きのものを指定します。候補者が顔写真付きの身分証明書を所持していない場合は、健康保険証と住民票など、複数の身分証明書を提出してもらうことで真正性を高めます。
また、推薦者の氏名・連絡先などを候補者から提供してもらい、提出してもらった本人確認書類と照合することも大切です。
推薦者しか知らない情報を質問する
リファレンスチェックで推薦者にヒアリングする際は、推薦者しか知らない情報について質問しましょう。
たとえば推薦者と候補者が一緒に携わった業務についてのエピソード、または推薦者から見た候補者の働きぶりや実績、スキルについての具体例などです。推薦者にしか答えられないような質問をし、できるだけ具体的に回答してもらうことでなりすましを見抜くことが可能です。
推薦者のメールアドレスドメインを確認する
推薦者のメールアドレスを確認するのもなりすましを見抜く方法のひとつです。
会社用のメールアドレスを提供してもらい、企業の独自ドメインが含まれているかどうかを確認します。企業ドメインが含まれているメールアドレスでやりとりができれば、その推薦者が企業に在籍中であることが確認できるでしょう。
リファレンスチェックを拒否される場合もある

前述のとおり、候補者がなりすましをする理由のひとつにはリファレンスチェックへの認識不足からくる不安や抵抗感があります。さまざまな対応策でなりすまし行為を防げたとしても、候補者によってはリファレンスチェックそのものを拒否するパターンもあります。
候補者の合意なくリファレンスチェックを行うことはできません。候補者に無断でリファレンスチェックを行った場合、個人情報保護法などの法律に抵触します。
リファレンスチェックの必要性について理解を得られない場合は、ほかの方法を検討しましょう。
推薦者の確認を徹底してリファレンスチェックのなりすましを防ぐ
リファレンスチェックには採用ミスマッチや早期離職を軽減し、入社後に活躍できる人材を採用できるという大きなメリットがあります。
なりすまし行為によって候補者の情報が操作されると正しい評価ができなくなります。リファレンスチェックを実施する際は、候補者の懸念事項を確認して不安や抵抗感を和らげる、推薦人の選定条件を緩和する、推薦者の在籍確認を行うなど徹底したなりすまし対策が必要です。
推薦者が選定されたら、本人確認書類の提出やメールアドレスドメインの確認、推薦者しかわからない質問をすることで、なりすましのリスクを最小限に抑えましょう。