リファレンスチェックとは、企業が求職者の履歴書や職務経歴書に偽りがないかなどをチェックする取り組みです。求職者の履歴や経歴の調査に取り組むことで、求職者の虚偽を見抜けるだけでなく、採用のミスマッチを防止可能です。
しかし、リファレンスチェックは必ずしもスムーズに進められるわけではありません。状況によっては実施できない可能性もあるでしょう。この記事では、リファレンスチェックが拒否されるケースや拒否された場合の対策などを解説します。
リファレンスチェックを拒否する人はいるの?

リファレンスチェックはさまざまな理由で拒否を言い渡されてしまい、実施できない可能性があります。例えば経歴や職歴に詐称がなかったとしても、転職活動を知られたくない、前職との関係性が悪いなどの理由で拒否されるかもしれません。
また求職者によっては、リファレンスチェックとはなんであるのか、十分に理解できていないことが原因で拒否する可能性もあります。リファレンスチェックがなぜ必要なのかをしっかりと伝えて、実施にあたっての理解を得ることが大切です。
拒否されても実行すると法律に抵触する
リファレンスチェックを拒否された場合、勝手に実施してしまうと法律に抵触する恐れがあります。
リファレンスチェックでは、求職者の経歴や職歴などの個人情報を取り扱います。そのため、求職者に拒否されたにも関わらず実行してしまうと法律に抵触しかねません。
例えば、求職者の情報を無断で第三者に提供すると個人情報保護法に違反してしまいます。
個人情報保護法に反し、無断で第三者に個人情報を提供すると、指導・助言や勧告・命令が下されます。指導や助言、勧告、命令に応じない場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰則もしくは罰金が科せられる可能性があります。不要なトラブルを避けるために拒否されたのであれば、リファレンスチェックの実行は控えましょう。
リファレンスチェックが拒否されるケース
リファレンスチェックは大きく次の3つのパターンで拒否されます。
- 候補者による拒否
- 推薦者による拒否
- 企業による拒否
それぞれのパターンについて詳しく解説します。
候補者による拒否

候補者がリファレンスチェックを拒否する理由は以下のとおりです。
- 現職に転職活動を知られたくない
- 以前の職場との関係が芳しくない
- 履歴書・職務経歴書を詐称している
現職に転職活動を知られたくない
転職活動中の候補者のなかには、現在の在籍してる職場に転職活動を知られたくないという人もいるでしょう。転職活動を現在の職場に知られてしまうと、職場に居づらくなるなど転職できなかった際のリスクにつながりかねません。
リファレンスチェックが実施されると、現職の関係者にヒアリングが実施される可能性があります。そのため、現在の職場に転職活動をしていることをを知られたくないという求職者の場合、調査に対して積極的ではない可能性があります。
以前の職場との関係が芳しくない
リファレンスチェックでは前職の関係者にヒアリングが実施されます。そのため、円満退職していないなど前職との関係が芳しくないと、リファレンスチェックを拒否されるかもしれません。
ほかにも前職でハラスメントを受けていたことで、リファレンスチェックを拒否する可能性もあるでしょう。
履歴書・職務経歴書を詐称している
リファレンスチェックは、求職者が自社の求めるスキルを備えているかを確認するだけではありません。求職者が提出した履歴書、職務経歴書に偽りがないかもチェックします。
そのため、履歴書や職務経歴書を詐称している求職者の場合、履歴、経歴のチェックを拒否する可能性があります。
推薦者による拒否

求職者から推薦者を紹介してもらったとしても、必ず質問に答えてくれるわけではありません。リファレンスチェックは推薦者であっても拒否が可能です。
推薦者が拒否する理由は主に次のとおりです。
- 求職者と関係がよくなかった
- 多忙のため対応できない
求職者と関係がよくなかった
推薦者と求職者との関係がよくなかった場合、リファレンスチェックを拒否されかねません。例えば勤務態度が悪かった人の転職活動をサポートしたくない、責任を持ちたくないという気持ちを持っている推薦者もいるかもしれません。
推薦者がリファレンスチェックに協力してくれないのであれば、ほかの方法で求職者の適正を判断するか、より以前の職場に相談してみましょう。
多忙のため対応できない
推薦者もリファレンスチェックには多少の時間を割く必要があります。そのため、多忙のために対応できないもしくは協力してくれない可能性もあります。
例えば年末年始のような大型休暇の前後、年度末などは多忙なために推薦者から拒否されるかもしれません。また、人手が不足している企業の場合も忙しくてリファレンスチェックに人員を割けないケースがあります。
企業による拒否
リファレンスチェックは推薦者だけでなく、企業自体に拒否される可能性があります。推薦者に拒否されるケースと同じく、多忙な時期では企業に拒否されかねません。
また、個人情報を取り扱うため、法的なリスクを懸念して拒否されることもあるでしょう。
リファレンスチェックを拒否されない工夫
リファレンスチェックを拒否されないためには次のような工夫を凝らしてみましょう。
- 候補者に早めに伝える
- ツールで効率化する
上記に加えてなぜリファレンスチェックを実施するのかを候補者や推薦者に入念に伝えて理解を得ることも大切です。
候補者に早めに伝える

採用候補者である求職者に対しては、早めにリファレンスチェックについて伝えておきましょう。求職者が推薦者を選定して、リファレンスチェックについて説明するには一定の時間が必要です。
推薦者がリファレンスチェックについて了承したとしても、日程調整をする必要があります。そのため、求職者へは早めにリファレンスチェック実施について伝えることが大切です。求職者に対してリファレンスチェックを伝える方法として以下が挙げられます。
- 募集要項にリファレンスチェック実施について記載する
- 企業説明会で伝える
募集要項や企業説明会でリファレンスチェック実施について伝えておけば、経歴をチェックされたくないという求職者の足切りや履歴書、職務経歴書の詐称防止も期待できます。
ツールで効率化する
推薦者や企業にリファレンスチェックを拒否される理由のひとつとして、多忙が挙げられます。
多忙を理由にリファレンスチェックを拒否されないためには、ツールの導入がおすすめです。ツールを導入することで、リファレンスチェックの効率化が実現可能です。
例えばアンケートツールであればメールよりもスピーディに回答ができるため、推薦者の負担を軽減できます。
メールで質問状を送付することも求職者の経歴を把握するのに機能しますが、多忙の場合、回答を得られない可能性があります。そのため、アンケートツールを使って効率的なリファレンチェックを提案してみましょう。
リファレンスチェックが拒否されたらどうする?
リファレンスチェックが拒否された際には次のような対応を検討してみましょう。
- 対象を広げる
- オンラインでの実施を検討してみる
- リファレンスチェックができない人もいる
対象を広げる
候補者が頼める推薦者を見つけられないのであれば、チェックの対象を広げてみましょう。例えば転職経験が多い候補者であれば、前々職での上司に推薦者になってもらうことも可能です。
オンラインでの実施を検討してみる

リファレンスチェックは質問を受ける推薦者の業務時間を割いてしまいます。そのため、多忙をはじめとした理由で推薦者に拒否されてしまうケースがあります。
多忙を理由に拒否されたのであれば、オンラインでの実施を検討してみましょう。オンラインで簡単なアンケート回答する形式であれば、多忙な推薦者であっても対応してくれるかもしれません。
リファレンスチェックができない人もいる
リファレンスチェックを拒否された場合、対象を広げたりオンラインで実施したりすることで、対応してくれることもあります。しかし、いくら対策を講じてもリファレンスチェックができない人もいます。
このような場合、拒否した求職者を採用するかどうかは企業によって対応が異なります。リファレンスチェックができなかった求職者を採用するのかどうかは、自社でしっかりと話し合いましょう。
リファレンスチェックができない場合はバックグラウンドチェックで対応
さまざまな対策を講じてもリファレンスチェックを拒否されたのであれば、バックグラウンドチェックで対応するという方法があります。バックグラウンドチェックでは推薦者は不要です。
バックグランドチェックでは求職者の次のような情報を確認します。
- 学歴や職歴
- 反社会的勢力との関係
- 破産歴や民事訴訟歴
これらの情報を確認するために、学校や信用情報機関に問い合わせます。なお、バックグラウンドチェックも無断では実施できません。
リファレンスチェックの代わりとしてバックグラウンドチェックを実施する場合であっても、必ず求職者本人に許諾を取っておきましょう。
リファレンスチェックを適切に実施する流れ
リファレンスチェックを適切に実施するには、次のような流れを把握しておきましょう。
- 候補者にリファレンスチェックの許可を得る
- 候補者から紹介された推薦者に連絡する
上記のような流れを一次面接終了後から最終面接の前までに終えておくのが一般的です。内定を出した後にリファレンスチェックを実施すると、万が一の際に内定取り消しが認められない場合があります。
候補者にリファレンスチェックの許可を得る
リファレンスチェックの実施にあたっては候補者(求職者)の許可を得ておきましょう。求職者によっては概要や目的を把握していない可能性があります。そのため、許可を得る際にはなぜリファレンスチェックが必要なのか、どのようなことをするのかをしっかりと伝えましょう。
求職者がリファレンスチェックに同意したかどうかは書面に残すのがおすすめです。個人情報を取り扱うため、口頭でのやり取りだけでなく書面にも残すようにしましょう。書面に残すことで認識のズレが発生することを防止できます。
候補者から紹介された推薦者に連絡する

候補者から紹介された推薦者に連絡をして日程を調整しましょう。一般的にリファレンスチェックは30分程度で終わります。役職によっては30分を超える可能性があるため、どれくらいの時間が予想されるかは事前に推薦者に伝えておくことが大切です。
また、時間を伝えたら予定どおりに進むかどうかを社内でシミュレーションすることも大切です。推薦者と日程が調整できたら求職者についての質問を進めていきましょう。
リファレンスチェックの質問は事前に作成しておく
リファレンスチェックにおいて、推薦者に投げかける質問は事前に作成しておくことでスムーズに進められます。
リファレンスチェックでは主に次のような項目を質問しましょう。
- 勤務態度
- 自分(求職者)について
- スキルについて
あまりにうわべだけの質問では当たり障りのない回答になってしまい、求職者について深く知れない可能性があるので注意しましょう。
質問結果はまとめて自社で共有する
推薦者に質問をした結果は報告書としてまとめて、自社の採用担当者や関係者に共有しましょう。報告書を作成する際は同じフォーマットにすることで、スムーズな選考につなげられます。
リファレンスチェックは外部に依頼できる
リファレンスチェックは自社で進められますが、さまざまなデメリットにつながりかねません。例えばリファレンスチェックを自社で進めることで、担当者の負担増加が懸念されるでしょう。
自社でリファレンスチェックをすることのデメリットを解消するのであれば、外部への依頼を検討するのがおすすめです。
リファレンスチェックの依頼先として以下が挙げられます。
- 代行サービス会社に依頼する
- 調査会社に依頼する
代行サービス会社に依頼する
リファレンスチェックは、代行サービスを展開してる会社に依頼可能です。リファレンスチェックの代行サービス会社を利用することで、自社の担当者の業務負担を軽減できます。
リファレンス代行サービス会社に依頼するメリットは業務負担の軽減だけではありません。リファレンスチェックについての経験が豊富なため、質問項目を入念に設計してくれます。その結果、自社が望んだ回答を得やすくなるでしょう。
代行サービス会社に依頼するデメリット
リファレンスチェックの代行サービス会社への依頼は、費用がかさんでしまうというデメリットがあります。代行サービス会社に依頼した場合、自社でリファレンスチェックをするよりも費用がかかってしまうのが一般的です。
さらに、代行サービス会社にリファレンスチェックを依頼した際、結果までに時間がかかるだけでなく、詳細な情報を把握できない可能性があります。調査方法の詳細やどのように実行したのかなどは明らかにされないケースもあります。
調査会社に依頼する

リファレンスチェックは調査会社にバックグラウンドチェックとして依頼可能です。バックグラウンドチェックで確認するのは経歴や前職の状況、人となりだけではありません。金銭トラブルや職場トラブルがなかったかといった素行もチェック可能です。さらに、過去に事件を起こしていないかや反社会的勢力との関係がないかなどのチェックも入念に行われます。
調査会社によっては、バックグラウンドチェックの結果を詳細な調査報告書として提出してくれるケースがあります。詳細な調査報告書を提出してくれる調査会社の場合、関係者や近隣への入念な調査や写真撮影など、机上の調査以外も実施してくれているといえるでしょう。
調査会社にバックグラウンドチェックを依頼して求職者と反社会勢力の関係性を確認することの重要性は次のとおりです。
- 政府の方針に沿う必要がある
- 暴力団廃止条例に従う必要がある
- 取引先や銀行と取引停止になりかねない
- 上場廃止や上場できない可能性がある
- 企業としての信頼が低下する可能性があるため
業種や迎え入れる役職によっては、バッググラウンドチェックを行うことでさまざまな雇用リスクを回避できるでしょう。
政府の方針に沿う必要がある
法務省では『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』として、企業が反社会的勢力との関わりを断つ方法を策定しています。法務省(政府)が定める指針に従って経営していくことは企業に求められる責任です。
暴力団廃止条例に従う必要がある
暴力団廃止条例に従ううえでも、求職者へのバックグラウンドチェックは欠かせません。各都道府県は健全な経済活動を進めていくために、暴力団廃止条例を設けています。
そのため、企業は求職者のバックグランドをチェックして反社会的勢力と関係がないかを確認することが大切です。
取引先や銀行と取引停止になりかねない
自社の従業員が反社会的勢力と関係を持っていることが分かると、取引先や銀行からの信頼が低下します。その結果、取引先や銀行との取引停止につながりかねません。
取引先や銀行は反社会的勢力と関係を持っている企業とは一定の距離を保つのが一般的です。そのため、自社の従業員が反社会的勢力と関係を持っていないかどうか、バックグラウンドチェックを実施することが大切です。
上場廃止や上場できない可能性がある
企業によって反社会的勢力と関係していることは悪影響になります。特に上場企業にとっては大きな問題です。上場企業が反社会的勢力と関係を持っていることが分かってしまうと、上場廃止される可能性があります。
上場していない企業であっても、反社会的勢力と関わっているのであれば将来的に上場が難しくなるかもしれません。今後、企業を上場させてより大きく成長させたいと考えているのであれば、バックグラウンドチェックを実施しましょう。
企業としての信頼が低下する可能性があるため
反社会的勢力と関係していることが知られてしまうと、企業としての信頼が大きく低下する可能性があります。取引先からの信用が低下するだけでなく、顧客からの信頼低下や株主からの信頼低下にもつながる可能性があるでしょう。
リファレンスチェックを依頼して効率的に採用活動を進めよう
リファレンスチェックは、求職者全員が承諾してくれるわけではありません。拒否されてしまえば実施できません。求職者だけでなく、推薦者であっても多忙などを理由にチェックに協力してくれない可能性があります。
候補者に早めに情報を共有する、ツールでリファレンスチェックを効率化するといった工夫を凝らすことで拒否のリスクを軽減可能です。
リファレンスチェックは自社で進められるものの、担当者の負担が増加しかねません。そのため、代行サービス会社や調査会社に依頼しましょう。