少子高齢化による労働力不足が進むなか、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、新しい採用手法を取り入れる企業が増えてきました。オウンドメディアリクルーティングも新しい採用手法のひとつです。
そこでこの記事では、オウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリットや、一般的な採用サイトとの違いについて解説します。成功させるためのコツについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
オウンドメディアリクルーティングとは?
オウンドメディアリクルーティングは、新しい人材を採用する手法のひとつです。ここでは、オウンドメディアリクルーティングの基本的な意味を確認しておきましょう。
オウンドメディアとは自社で保有・運営しているメディア

そもそもオウンドメディアとは、自社で保有し、運営しているメディアのことです。具体的には、会社の公式ホームページ、Instagram、X、ThreadsといったSNSの公式アカウント、YouTubeチャンネルなどが挙げられます。
公式ホームページとは別に関連情報サイトなどを立ち上げ、認知度を高めたり、商品やサービスを宣伝したりする企業も増えてきました。本来は、紙のパンフレットなどもオウンドメディアに含まれますが、近年はオンライン上で情報発信を行う企業が増えてきています。
オウンドメディアリクルーティングとは自社メディアを活用した採用手法
オウンドメディアリクルーティングとは、SNSやWebサイトなどのメディアを活用して採用活動を行うことです。以前は、オウンドメディアは商品やサービスの宣伝のために活用されることが多かったのですが、採用活動に利用されるケースも増えてきました。
具体的には、YouTubeチャンネルで自社の仕事内容や働いている従業員の雰囲気を伝える、採用のためのWebサイトを作成してIndeedに掲載するなどの方法が挙げられます。オウンドメディアを活用すれば自由にコンテンツを発信できるため、自社の魅力を的確に伝え、求職者の共感を得ることを期待できるでしょう。
オウンドメディアリクルーティングと採用サイトの違い
ここでは、オウンドメディアリクルーティングと採用サイトや人材紹介との違いについて確認しておきましょう。
1.オウンドメディアリクルーティングと採用サイトの違い

オウンドメディアと採用サイトの大きな違いは、自社がメディアを保有しているか否かという点です。採用サイトを活用する場合は、運営会社に依頼して、自社の求人情報を掲載してもらいます。
当然、採用サイト側のフォーマットやルールに従うことになるため、自由に情報を発信することはできません。文字数や画像枚数、記載内容などに制限があるケースも多いでしょう。また、自社の求人情報が膨大な情報のなかに埋もれてしまうこともあります。
一方のオウンドメディアリクルーティングの場合は、自社が所有するメディアを活用するため、情報発信に関する制限は基本的にありません。写真や動画を投稿して視覚的に説明したり、コメント機能を使って求職者とコミュニケーションを取ったりすることも可能です。
2.オウンドメディアリクルーティングとダイレクトリクルーティングの違い
ダイレクトリクルーティングとは、企業側が優秀な人材を積極的に探し出し、直接アプローチする採用手法です。具体的には、ビジネスに特化したデータベースに登録して人材を探す、自社の従業員から紹介してもらうなどの方法が挙げられます。優秀な求職者が見つかった場合は、自社の仕事内容や魅力を伝え、採用につなげます。
オウンドメディアリクルーティングにおいても積極的な情報発信を行いますが、求職者個人に直接的にアプローチすることは基本的にありません。2つの手法は異なるものですが相性はよいため、ダイレクトリクルーティングで出会った優秀な人材をオウンドメディアに誘導するなど、組み合わせて採用活動を進めるとよいでしょう。
3.オウンドメディアリクルーティングと人材紹介の違い
人材紹介とは、採用活動をしている企業と求職者をマッチングしてくれるサービスのことです。就職エージェントや転職エージェントなどとも呼ばれます。人材紹介の大きな特徴は、採用活動を効率化できることです。成功報酬を支払う必要はありますが、求めるスキルや資格などの要件を伝えておけば、合致する人材を紹介してもらえます。
一方のオウンドメディアリクルーティングの場合、自社の力で情報を発信し、求職者に興味をもってもらうことが必要です。認知度が低い企業の場合は、なかなか情報を見てもらえず、採用に時間がかかるケースもあるでしょう。ただし、一度認知度が高まれば、継続的に求職者が集まるようになり、採用コストを削減できます。
オウンドメディアリクルーティングに取り組む企業が増えている理由
オウンドメディアリクルーティングに取り組む企業が増えている理由として、以下のようなことが挙げられます。
1.採用競争が激化しているから

少子高齢化による労働力不足が進むなか、人材を継続的に採用することは多くの企業が抱えている課題です。優秀な人材に出会える可能性を高めるため、採用サイトの活用はもちろん、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用などを取り入れ、さまざまな方法で求職者にアプローチする企業も増えてきました。
このように採用競争が激化している状況において、従来のように待っているだけでは優秀な人材を確保することはできません。積極的に動いているライバル企業に、求職者を取られてしまうケースもあるでしょう。そこでオウンドメディアリクルーティングによって、自社の知名度を上げ、求職者にアピールする企業が増えてきているのです。
2.仕事に対する価値観が多様化しているから
働くことに対する価値観が多様化していることも、オウンドメディアリクルーティングに注目が集まる理由のひとつです。以前とは異なり、給与や福利厚生だけを比較して入社する企業を選ぶ求職者は減ってきました。
近年は、ワークライフバランスを確保できるか、仕事を通してキャリアアップできるか、職場の人間関係は良好かなど、さまざまな視点で企業を比較する求職者が増えてきています。
企業としても、求職者の価値観の変化に対応しなければなりません。しかし、一般的な採用サイトでは掲載できる情報に限りがあるため、働きやすさや職場の雰囲気などを詳しく伝えることは難しいでしょう。一方、オウンドメディアリクルーティングであれば自由な情報発信が可能となるため、求職者へのアピールのために利用する企業が増えてきています。
3.オンラインでの情報収集が主流となっているから
スマートフォンやタブレットの普及に伴い、オンラインでの情報収集が主流となっています。仕事を探す際、インターネットで気になる企業の情報を検索したり、SNSで関連情報を集めたりする求職者も増えてきました。
従来のようなオフラインでの会社説明会なども重要ですが、オンラインでの情報発信を怠ると、求職者との接点が減ってしまう可能性もあるでしょう。オウンドメディアを有効活用して他社との差別化を図り、多くの求職者と接触することが重要です。
オウンドメディアリクルーティングを実施するメリット
オウンドメディアリクルーティングを実施することには、以下のようなメリットがあります。
1.ミスマッチを防止できる

採用に関するミスマッチを防止できることは、オウンドメディアリクルーティングを実施する大きなメリットです。せっかく人材を採用しても、職場の雰囲気に馴染めなかったり、企業の理念に共感していなかったりすると、早期に離職してしまう可能性があります。
採用サイトなどを使っていると、自社の情報を十分に伝え切れず、ミスマッチが発生することも多いでしょう。オウンドメディアを活用すれば、自社の魅力や雰囲気を丁寧に伝えることができるため、ミスマッチによる早期離職を防止できます。
2.採用コストを削減できる
オウンドメディアを活用すれば、採用活動にかかるコストを削減することが可能です。もちろん、新しいWebサイトを構築したり、SNSを運用したりするためにはコストがかかります。
しかし、導入時の作業が一段落し、運用がうまく進めば、オウンドメディアに自然と求職者が集まるようになるため、採用コストは少しずつ減っていくでしょう。採用サイトや人材紹介を利用するときのように、高額な費用が発生することもありません。また、オウンドメディアは企業の資産となり、長期的に活用していくことが可能です。
3.認知度の向上につながる
自社の認知度向上を図れることもオウンドメディアリクルーティングのメリットです。たとえば、SEOを意識したコンテンツを作成すれば、検索結果から自社メディアを閲覧してくれる人が増えるでしょう。
また、SNSに情報を投稿する際にハッシュタグを付けておけば、求職者に見てもらえる可能性が高まります。興味深い内容や有益な情報を投稿すれば、拡散されて認知度が高まることも大きなメリットです。
4.自由なタイミングで更新できる
オウンドメディアの内容は、自由なタイミングで更新したり、修正したりすることが可能です。求職者の反応がいまいちなときに情報を修正することや、職場の写真を日々更新して興味を引くことなどもできます。
採用サイトなどの場合、一度求人を出すと一定期間変更できないケースもあります。求職者の反応や応募状況に合わせて臨機応変に進めていきたい場合は、オウンドメディアリクルーティングを行うとよいでしょう。
オウンドメディアリクルーティングを実施するデメリット
さまざまなメリットがある一方、オウンドメディアリクルーティングには以下のようなデメリットもあります。
1.すぐに採用できるとは限らない
オウンドメディアリクルーティングをスタートしたからといって、すぐに人材を採用できるとは限りません。人材紹介などとは異なり、オウンドメディアリクルーティングの成果が出るまでにはある程度の時間がかかると思っておきましょう。
たとえば、自社のWebサイトを立ち上げても、すぐにアクセスが集まるわけではありません。継続的にコンテンツを作成していくことで、少しずつアクセスが集まるようになります。急いで人材を補充する必要があるときは、人材紹介や採用サイトなどを活用するのがおすすめです。
2.マーケティングやコンテンツ作成の知識が必要となる

オウンドメディアリクルーティングを成功させるためには、Webマーケティングやコンテンツ作成、SNS運用に関する知識が欠かせません。採用ターゲットとなる人材に合わせて情報を発信したり、SEO対策を行ったりする必要があるからです。
また、Webデザインやインターフェイス設計に関するスキルも必要となります。必要な知識やスキルを保有する従業員が社内にいない場合は、専門業者などに依頼することになるでしょう。
3.短期的に見るとコストがかかる
オウンドメディアリクルーティングが成功し、求職者が継続的に集まるようになれば採用にかかるコストを削減できますが、スタートする段階では高額のコストが発生することもあります。
たとえば、Webサイトを構築するための費用や、SNSを運用するための人件費などが挙げられます。途中で計画がストップしてしまわないよう、オウンドメディアリクルーティングを始める前に、自社の予算を明確にしておくことが重要です。
オウンドメディアリクルーティングを成功させるコツ
オウンドメディアリクルーティングを成功させるためには、ターゲットを明確にすることや社内の協力体制を構築することなどが重要です。ここでは、採用活動を進めるうえでのコツを紹介しますので、事前にチェックしておきましょう。
1.ターゲットを明確にする
オウンドメディアリクルーティングに限らず、採用活動を成功させるためにはターゲットを明確にすることが大切です。求めるスキルや経験、資格など、理想的なターゲット像を設定しておきましょう。
ターゲットが不明確なまま採用活動を進めても、どのようなコンテンツを作成し、どのようにアプローチすべきかわからず、計画がうまく進まなくなります。適切なコンテンツを作成するためにも、ターゲット像を具体的に設定しておくことが重要です。
2.社内の協力体制を構築する

オウンドメディアリクルーティングを成功させるためには、社内の協力が欠かせません。オウンドメディアのなかで、従業員のインタビューや職場の雰囲気を掲載することが多いからです。
しかし、従業員にインタビューするためには、通常の業務を中断してもらい、時間を確保してもらう必要があります。上司にも許可を取り、業務を調整してもらう必要もあるでしょう。いきなりオウンドメディアリクルーティングをスタートすると現場が混乱する可能性もあるため、事前に内容や重要性を伝え、協力してもらうことが大切です。
3.さまざまなコンテンツを準備する
オウンドメディアリクルーティングを取り入れるなら、幅広いコンテンツを準備するとよいでしょう。給与や福利厚生といった情報であれば、一般的な採用サイトでも掲載できます。せっかくオウンドメディアを立ち上げるなら、企業の理念や目標、従業員のインタビューなどを掲載し、やりがいや魅力を伝えるのがおすすめです。
また、テキストだけではなく、写真や動画なども活用するとよいでしょう。多くの情報を伝えたいからといって長い文章を書いても、なかなか読んでもらえません。写真や動画などを用いて視覚的に伝えることも検討しましょう。
4.定期的に効果を検証する
オウンドメディアリクルーティングを成功させるためには、定期的に効果を検証することが大切です。Webサイトのアクセス数やSNSのフォロワー数、応募者数がどのように増減しているか、しっかりと把握しましょう。
期待していたほどの効果が出ていない場合は、ターゲット設定やコンテンツ作成の方法が間違っていた可能性もあります。必要に応じて採用計画を見直すなど、臨機応変に進めていきましょう。
オウンドメディアリクルーティングを取り入れて優秀な人材を確保しよう!
今回は、オウンドメディアリクルーティングの意味やメリット、成功させるためのコツなどを紹介しました。オウンドメディアリクルーティングを取り入れれば、採用コストの削減やミスマッチの防止、認知度の向上などのメリットを得られます。
ただし、スタートしてすぐに優秀な人材を確保できるとは限りません。オウンドメディアリクルーティングの効果が出るまでには、ある程度の時間がかかります。継続的にコンテンツを発信していく必要があるため、しっかりと計画を立てたうえで進めるようにしましょう。