仕事からしばらく離れて、仕事に対する価値観を見つめ直したり、新しい知識を得るために勉強したりするキャリアブレイクという考え方に注目が集まっています。
この記事では、キャリアブレイクの意味や注目されている理由、メリット・デメリットなどを紹介します。キャリアブレイク経験者を採用するときの注意点についても解説しますので、ぜひ理解を深めておきましょう。
キャリアブレイクとは?
キャリアブレイクとは、現在の仕事からしばらく離れて、今後の生活や仕事への向き合い方を客観的に見つめ直すことです。「career(経歴)」と「break(休憩)」という2つの言葉が組み合わされており、完全に仕事から離れる退職とは異なり、一時的に仕事から離れるという意味合いがあります。
キャリアブレイクの期間はどう過ごす?

キャリアブレイク中の過ごし方は人それぞれですが、以下のような前向きな活動をすることが一般的です。
- 自分が本当にやりたい仕事について考える
- 新しいスキルを習得するために学校に通う
- 資格を取得するために勉強する
- 社会に貢献するためにボランティア活動に参加する
- 病気や怪我の療養を行う
- 家族の育児や介護を行う
- リフレッシュのために旅行に行く
キャリアブレイクはネガティブなものではありません。さまざまな活動を通して自己分析を深めたり、スキルアップを図ったりすることで、仕事を含めた今後の生き方を考え直すことがキャリアブレイクの大きな目的といえるでしょう。
キャリアブレイクの期間はどのくらい?
キャリアブレイクの期間は、人によって異なります。やりたい仕事を探すために2〜3ヶ月休む、病気の療養のために半年程度休む、大学に通うために数年間仕事から離れるなど、目的によっても異なるでしょう。
数週間の夏期休暇や有給休暇などとは違い、人生をゆっくりと見つめ直すために、ある程度まとまった期間を確保するのが一般的です。
日本と欧州のキャリアブレイクの違い
キャリアブレイクはもともと欧州で広まった考え方で、ワークライフバランスを確保するための仕組みとして浸透しつつあります。欧州では、長期休暇を取れるような仕組みを新しく構築する企業も増えてきました。会社に所属したまま制度を利用して長期休暇を取り、資格取得を目指したり、ボランティア活動に参加したりする人もいます。
一方の日本においては、制度としてのキャリアブレイクはあまり浸透していません。仕事や生活について考え直したい場合は、いったん会社を退職するケースが多いでしょう。離職している期間を前向きに捉え、勉強したり休息したりすることが一般的です。
キャリアブレイクとキャリアブランクの違い
キャリアブレイクと似た言葉として、キャリアブランクがあります。キャリアブランクとは、仕事をしていない期間のことです。働きたくても仕事が見つからないなど、ネガティブな印象のある言葉といえるでしょう。
一方のキャリアブレイクには、ネガティブな意味はありません。キャリアブレイクの期間は仕事から離れているものの、今後のキャリアや生活スタイルを考えるうえで重要な時間です。
キャリアブレイクとサバティカル休暇の違い
サバティカル休暇とは、一定の条件を満たした従業員に対して付与する長期休暇のことです。もともとは休みを取得しにくい研究施設や教育機関などにおいて導入された制度ですが、一般の大企業などでも取り入れられるようになりました。
サバティカル休暇の大きな特徴は、会社に所属しながら、スキルアップやリフレッシュのために長期間の休みを取得できることです。一方、日本におけるキャリアブレイクでは、いったん会社を退職してから休むケースが多いでしょう。
キャリアブレイクに注目が集まっている理由
キャリアブレイクに注目が集まっている理由としては、リカレント教育を受けたい人やワークライフバランスを重視したい人が増えたことなどが挙げられます。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
1.リカレント教育を受けたい人が増えた

リカレント教育を受けたい人にとって、キャリアブレイクはとても重要な意味をもつでしょう。リカレント教育とは、学校教育から離れて社会人になってから、必要な内容を学び直すことです。
より高度な仕事を担当するために新しいスキルを身につけたい、学生時代に習得しきれなかった内容を勉強し直したいなどの思いから、リカレント教育に興味をもつ人も増えてきています。
従業員が新しいスキルを習得して活躍してくれることは会社側のメリットでもあるため、リカレント教育を推進する企業も増えてきました。とはいえ、制度として整っている企業はまだまだ少ないため、キャリアブレイクによって仕事を離れている期間にリカレント教育を受ける人もいます。
2.自己理解を深めたい人が増えた
自己理解を深めることは、キャリアブレイクの大きな目的です。仕事に対する価値観や目標を再確認することで、本当にやりたい仕事が見つかったり、キャリアプランを再構築できたりします。
より自分に合った職場へ転職するために、自己理解を深めたいという人も多いでしょう。しかし、仕事が忙しいとゆっくりと自分のことを考える時間を確保できないため、キャリアブレイクの期間中に自己理解を深めようとする人も増えてきました。
3.ワークライフバランスが重視されるようになった
ワークライフバランスが重視されるようになったことも、キャリアブレイクに注目が集まる理由のひとつです。働きすぎを避けて仕事とプライベートを両立させ、肉体的にも精神的にも健康な生活を送ることが重要視されるようになりました。
キャリアブレイクは、ワークライフバランスを確保するための方法のひとつです。有給休暇を付与されても取得しにくい、長期休暇を取得する制度がない、といった理由から思い切って仕事を離れ、しっかりと休む人もいます。
キャリアブレイクを取り入れるメリット
キャリアブレイクを企業がポジティブなものとして捉えることで、以下のようなメリットを得られます。
1.従業員のモチベーションアップにつながる
キャリアブレイクを前向きに捉えることで、従業員のモチベーションアップを図れます。たとえば、キャリアブレイクを経験した人材を採用すれば、既存の従業員は新しい価値観に触れることが可能です。
キャリアブレイク経験者の話を参考にしながら新しいスキルの習得を目指したり、自分のキャリアプランを考え直したりする従業員も出てくるでしょう。自分の目標や進むべき方向が明確になり、仕事への意欲が高まる可能性もあります。多様な従業員の存在により社内を活性化させるためにも、キャリアブレイクを前向きに捉えてみるとよいでしょう。
2.優秀な人材を確保できる

キャリアブレイク経験者を採用候補とすることで、優秀な人材を確保できるケースもあります。キャリアブレイク中にスキルアップを図ったり、難易度の高い資格を習得していたりする可能性があるからです。仕事をしていない期間をネガティブに捉えず、何をしていたか詳しく聞いてみるとよいでしょう。
また、キャリアブレイク経験者を採用することで、人材不足の解消を図れます。
幅広い人材を募集していることをアピールすれば、応募者が増え、採用活動が効率よく進むことを期待できるでしょう。
3.従業員のスキルアップを図れる
キャリアブレイクを制度として導入し、会社に所属したまま長期休暇を取れるようにすれば、従業員のスキルアップを図れます。リカレント教育を受けたり、資格の取得を目指したりしたい従業員にとっては、役立つ仕組みになるでしょう。
ただし、キャリアブレイクを制度として導入するためには、手間とコストがかかります。残った従業員の負担が増えすぎないよう、業務の再配分や人材の補充などを検討することも必要です。
4.ストレス解消につながる
ストレス解消につながることも、キャリアブレイクを制度として導入するメリットのひとつです。まとまった休みを取得できるような仕組みにすることで、心身ともにリフレッシュを図れるでしょう。
従業員が長期間休むことはデメリットであると考えるかもしれませんが、心身ともに健康な状態を維持しながら長期的に活躍してくれることは、会社にとって大きなメリットです。
キャリアブレイクを取り入れるデメリット
さまざまなメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあるため注意しましょう。
1.人材が流出する可能性もある

キャリアブレイクを前向きに捉えることで、優秀な人材が流出してしまう可能性もあります。たとえば、キャリアブレイク経験者を採用した場合、新しい価値観に触れることで「自分もしばらく仕事を離れてみよう」などと考え、離職する従業員が出てくるかもしれません。
キャリアブレイクを制度として導入していれば一定期間で復帰してもらうことが可能ですが、制度がない場合、他の企業へ転職してしまうケースが多いでしょう。新しい人材を採用するまで、残った従業員の負担が増えることにも注意しなければなりません。
2.採用コストや教育コストがかかる
キャリアブレイク経験者を採用しようとする場合、採用コストや教育コストがかかることもあります。一般的な新入社員や中途社員とは異なる教育や研修を行うべきケースもあるからです。
もちろん、これまでの経験やキャリアブレイク中の過ごし方によっては、新たな教育や研修が不要なケースもありますが、人によって育成に時間がかかることもあるため注意しましょう。
3.業務を調整する必要がある
キャリアブレイクを導入して従業員に長期休暇を付与すると、社内の業務を再調整しなければなりません。休みを取る従業員が担当していた業務を、他の従業員に負担してもらう必要があるからです。プロジェクトに遅れが出たり、クライアントに迷惑がかかったりしないよう配慮しましょう。
キャリアブレイク経験者を採用するときのチェックポイント
キャリアブレイク経験者を採用するときは、面接などの際に以下のようなポイントを確認しましょう。
1.離職期間をどのように過ごしたか確認する
仕事を離れていた期間の過ごし方は、採用の可否を検討するための重要なチェックポイントです。離職期間が有意義であったかどうかは、過ごし方によって大きく異なります。
学び直しのために大学に通っていた、自分を見つめ直すためにボランティア活動に参加していたなど、納得できる理由があるかどうか面接時に詳しく聞いてみましょう。
2.新しく習得したスキルを確認する

キャリアブレイク中に学び直しをしていた場合は、新しく習得したスキルや知識について確認しましょう。取得した資格などについても確認しておく必要があります。
また、新しいスキルを習得しようと思ったきっかけや、新しい知識を活かす方法なども質問してみましょう。以前の勤務経験も含め、自社が求めているスキルや熱意などをもっているか慎重に判断することが重要です。
3.今後のキャリアプランを確認する
今後のキャリアプランも確認しておくべき項目のひとつです。どのような業務を担当したいか、仕事を通してどのように成長していきたいか、新しいスキルを活用してどのように会社に貢献したいのかなど、幅広い内容を聞いてみることで自社に合う人材かどうかを把握できるでしょう。
そのほか、志望動機や長所・短所、前職で担当していた業務や努力した内容など、一般的な採用面接で質問するような項目も確認しておくことが大切です。
キャリアブレイクを前向きに捉えて優秀な人材を確保しよう!
今回は、キャリアブレイクの意味やメリット・デメリットなどを紹介しました。リカレント教育を受けたい人や自己理解を深めたい人が増えたため、キャリアブレイクに注目する企業も増えてきています。
キャリアブレイクを制度として取り入れれば、従業員のワークライフバランスを確保できる、スキルアップを図り人材を育成できるなどのメリットを得られるでしょう。ただし、優秀な人材が流出してしまう可能性がある、業務調整が必要になるなどのデメリットもあります。キャリアブレイクを導入する場合は、メリット・デメリットを理解したうえで自社に合った制度設計を心がけましょう。