新しい従業員を採用してもすぐに辞めてしまうと、採用コストや教育コストが無駄になるだけではなく、ノウハウを蓄積できず会社の成長が止まってしまいます。人材がなかなか定着せず離職率が高くなっている場合は、離職の原因を究明し、必要な対策を立てなければなりません。
この記事では、従業員が定着しない会社の特徴や離職の原因、必要な対策について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
人がすぐに辞めていく会社に共通する特徴
人がすぐに辞めてしまう会社には、いくつかの共通する特徴があります。自社が以下のような特徴に該当する場合は、従業員を定着させるために対策をする必要があるでしょう。
1．努力しても評価されない
評価制度が整っておらず、努力しても評価されない状況では、従業員のモチベーションは低下してしまいます。いくら成果を出しても昇給がなかったり、能力や経験があるのに昇進できなかったりすると、評価制度が整っている会社へ転職しようと考える従業員が増えるでしょう。
やりがいや達成感さえあれば仕事を続けられる、というわけではありません。努力や成果を正当に評価してもらえることで、モチベーションが上がることも多いものです。評価制度を整えなければ、従業員を定着させることは難しいでしょう。
2．ワークライフバランスが悪い
ワークライフバランスが悪いことも、従業員が定着しない会社の特徴です。残業や休日出勤が多すぎたり、有給休暇を取得しにくかったりする職場では、従業員はプライベートを充実させることができません。自分の時間や家族との生活を大切にしたいと考える従業員は、ストレスを感じることもあるでしょう。
また、働きすぎにより心身の健康を維持できなくなるケースもあります。仕事を続けたいと思っていても、やむを得ず、退職や休職を選ぶ従業員もいるかもしれません。
3．人間関係に問題がある
職場の人間関係に問題があることを理由として、転職を検討する従業員もいます。たとえば、職場内でいじめやハラスメント行為が横行していると、当然、働きにくいと感じてしまうでしょう。
部下を責めるばかりで責任を取ろうとしない上司がいることや、まったく協力しようとしない同僚がいることなどもモチベーション低下につながります。従業員に安心して長く働いてもらうためには、人間関係の問題を見過ごすわけにはいきません。
4．仕事のやりがいがない
仕事のやりがいを感じられないことも、従業員がすぐに辞めてしまう理由のひとつです。やりがいを感じられない原因は人それぞれ異なりますが、スキルに対して仕事の難易度が低いこと、周囲の人がやる気をもって仕事に取り組んでいないこと、同じ仕事の繰り返しで刺激がないことなどが挙げられます。
自分の能力を存分に発揮できず、やりがいを失ったりモチベーションが低下したりすることで、転職を考える従業員もいるでしょう。
5．スキルアップにつながらない
仕事をしてもスキルアップにつながらないことを理由に、会社を辞めてしまう従業員もいます。とくに優秀な従業員は、スキルを身につけて昇進したい、より大きな仕事を担当して達成感を得たいなどと考えているでしょう。
同じような仕事ばかりで新しい能力が身につかない、雑務ばかりを押し付けられて成長の機会がない、といった環境では、物足りないと感じて転職してしまうケースもあります。
6．会社の将来性がない
会社の将来性がないことも従業員がすぐに辞めてしまう原因のひとつです。長く働きたいと思っていても、会社の業績が悪かったり、新しい事業展開が見られなかったりすると従業員は不安を感じてしまいます。
令和4年度の厚生労働省の調べでは、個人的理由で会社を辞めた男性の7.1％が「会社の将来が不安だった」と述べています。（35～39歳の男性は15.4%）（※1）
また、福利厚生や評価制度が整っていない、長時間労働が当たり前になっているなど、従業員が大切にされていないような環境では、自分の将来が不安になってしまうでしょう。業績がよく、働きやすい環境が整っている企業への転職を考える従業員が出てくるかもしれません。
（※1）厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概要」(2)転職入職者が前職を辞めた理由
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/gaikyou.pdf,p15
優秀な人材ほどすぐに会社を辞めるのはなぜ？
優秀な人材ほどすぐに転職して困っている、という企業も多いでしょう。
ここでは、優秀な人材がすぐに会社を辞めてしまう理由について解説します。
1．すぐに転職先が見つかるから
優秀な人材は、多くの能力や経験、資格を保有しているため、すぐに転職先を見つけることが可能です。自分のスキルや経験に自信がない従業員は、仮に現状に不満を感じていても、転職先が見つからないかもしれないという不安から、会社に残るケースもあるでしょう。
一方、優秀な人材は、現在の会社を辞めても次の仕事が見つかるだろう、新しい職場でも自分の能力を発揮できるだろうなどと考え、変化に臆することなくチャレンジすることを選びます。とくに評価制度や人間関係などに不満を感じている場合は、より積極的に行動を起こすことも予想できます。
2．企業の問題点を見抜く力をもっているから
企業の問題点を見抜き、不安や怒りを感じて転職を決意する従業員もいるでしょう。とくに優秀な人材は、さまざまな視点から経営状況や業務内容を分析する能力をもっています。
業務を進めるなかで社内の不正を発見したり、将来性に不安を感じたりすることも多いでしょう。仮に現在は問題が顕在化していないとしても、将来的に問題が大きくなることを予想して、早めに転職しようと考える従業員もいるかもしれません。
3．判断力が高いから
判断力が高いことも優秀な人材がすぐに辞めてしまう理由のひとつです。優秀な人材は、自社の評価制度や人間関係、仕事の将来性などを分析して、問題点を把握します。さらに他社の状況も調査して、転職することのメリット・デメリットを比較するケースもあるでしょう。
また、残るべきか辞めるべきかの選択を迫られたときは、迷うことなく判断することができます。前述のように、すぐに転職先が見つかるという自信があることも、早い決断につながるでしょう。
人がすぐに会社を辞めることによる問題
従業員がすぐに会社を辞めると、無駄な採用コストが発生したり、残った従業員の負担が増えたりしてしまいます。状況が悪化すると連鎖的に退職者が増えるケースもあるため注意しましょう。
ここでは、従業員が定着しないことによる問題について解説します。
1．採用コストや教育コストがかかる
採用コストや教育コストがかかってしまうことは大きな問題です。従業員を採用する際は、求人票を作成してメディアに掲載したり、書類選考や面接を実施したりしなければなりません。費用が発生するだけではなく、採用担当者の手間もかかってしまいます。
また、採用後すぐに活躍できるわけではありません。基本的には、ある程度の時間をかけて業務内容に関する教育や指導を行う必要があります。従業員がすぐに辞めてしまうと、上記のような採用コストや教育コストが無駄になってしまうでしょう。
2．残った従業員の負担が増える
誰かが退職すると、当然、残った従業員の負担が増えてしまいます。人員に余裕があれば問題ありませんが、そもそも人数の少ない職場の場合、他の従業員が仕事を肩代わりすることになり、大きな負担となるケースもあるでしょう。
すぐに人員を補充できない場合、残業や休日出勤が増え、体調を崩す従業員が出てくるかもしれません。仮に新しい人材を採用しても、仕事を覚えてもらうまでには時間がかかるため、しばらくの間は既存の従業員の負担は増えることになります。
3．連鎖的に退職者が増える可能性もある
定着率の低い会社では、連鎖的に退職者が増える可能性もあります。前述のように残った従業員の負担が増えることにより、転職しようと考える人が出てくるかもしれません。
人材がどんどん流出していることに不安を感じ、将来性がある会社に転職する人も出てくるでしょう。新しい人材を採用しても根本的な問題が解決しなければ、連鎖的な退職を止めることはできません。
4．ノウハウが流出する
ノウハウが流出することも大きな問題です。せっかく時間をかけて教育しても、すぐに転職されてしまうと、社内にノウハウを蓄積することができません。
習得したスキルや知識を仕事に活かしてもらえず、会社の成長も止まってしまうでしょう。ライバル企業にノウハウが流出してしまうことで、大きな損失につながる可能性もあります。
5．企業のイメージが悪くなる
従業員がすぐに辞めることは、企業のイメージにも影響を与えます。定着率が低いと、ブラック企業なのではないか、やりがいがないのではないか、といった印象をもたれ企業のイメージが悪くなってしまうでしょう。その結果、商品やサービスが売れなくなったり、採用活動がうまく進まなくなったりする可能性もあります。
人が辞めていく兆候
従業員が辞めていく前は、モチベーションが低下する、コミュニケーションが減る、不満が増えるなどの兆候が見られます。ここでは、辞めそうな従業員に見られる様子について確認しておきましょう。
1．モチベーションが低下する
何らかの理由で辞めることを検討している従業員は、仕事へのモチベーションが低下しているのが一般的です。前向きな転職であれば最後までやる気をもって仕事に取り組むことも考えられますが、仕事や人間関係などに不満がある場合は、熱意を失っているケースが多いでしょう。
以前よりも集中力がなくなっている、前向きな発言が少なくなったなどの様子が見られる場合、不満を感じて転職を検討しているかもしれません。
2．コミュニケーションが減る
コミュニケーションが減ることも、辞めそうな従業員に見られる兆候のひとつです。どうせ辞めるのだから上司や同僚との人間関係を維持する必要はないと考え、コミュニケーションに消極的になるケースもあります。
また、そもそも人間関係が原因で退職を考えている場合は、自然とコミュニケーションが減っていくでしょう。以前はよく会話していた従業員に大きな変化が見られた場合は、何らかの不満を感じている可能性もあるため注意が必要です。
3．不満を言うことが増えた
仕事や人間関係についての不満を言うことが増えた場合、モチベーションが下がっていたり、退職を検討したりしているかもしれません。不満を感じていたとしても前向きな意見や改善案を出すなら問題ありませんが、単純に愚痴や文句を言っている場合は注意が必要です。環境のよい別の職場を探している可能性もあるでしょう。
4．有給休暇を消化する
残っている有給休暇を積極的に消化している従業員は、仕事を辞めることを検討しているかもしれません。プライベートを充実させるために休暇を取得しているケースもありますが、すべての有給休暇を使うような場合は、会社に残る気がない可能性が高いでしょう。転職活動をするために有給休暇を取得していることも考えられます。
優秀な人材が辞めていくのを防ぐ方法
優秀な人材が辞めてしまうことは、企業にとって大きな損失です。定期的に不満をヒアリングする、公平な評価制度を構築する、福利厚生を充実させるなど、適切な対策を講じる必要があります。
ここでは、人材の流出を防ぐ方法を紹介しますので、チェックしておきましょう。
1．従業員の不満をヒアリングする
人材の流出を防ぐためには、従業員の不満をしっかりとヒアリングすることが大切です。従業員の声を聞かなければ、社内にどのような課題があり、どのような対策を立てるべきかを把握することができません。対話を通して不満の内容を具体的に把握したうえで、適切な解決策を考えましょう。
また、定期的に不満をヒアリングすることは、コミュニケーションの機会を増やすことにつながります。結果として信頼関係が構築でき、離職を止められるケースも増えるでしょう。
2．評価制度を見直す
評価制度を見直すことも人材の流出防止に役立ちます。評価制度は、従業員が不満を感じやすい部分のひとつです。努力しても褒められない、成果を出しても昇進できないような職場では、従業員が不満を感じてモチベーションが低下してしまいます。
正当に評価される職場へ転職しようと考える従業員が増えてしまうため、公平な評価制度の構築が求められます。
3．キャリアアップを支援する
優秀な人材を定着させるためには、キャリアアップを支援することも大切です。とくに優秀な人材は、与えられた作業をこなして給料をもらうだけではなく、より高いスキルを身につけ、難易度の高い仕事を担当することを目標にしています。
従業員に長く働いてもらうためには、研修会や勉強会などを開催して、新しいスキルや知識を習得できるよう支援していきましょう。適度に難易度の高い仕事を与える、資格取得の費用を補助する、といった対策も有効です。
4．福利厚生を充実させる
福利厚生を充実させることも人材を定着させる方法のひとつです。福利厚生とは、給与や賞与以外に、従業員やその家族に提供するサービスを指します。福利厚生は、雇用保険や労災保険といった導入することが義務付けられている法定福利厚生と、企業が自由に導入できる法定外福利厚生に分けられます。
住宅手当や家族手当などの法定外福利厚生を充実させれば、従業員の生活が豊かになり、長く働きたいという気持ちが生まれるでしょう。モチベーションの向上や生産性アップも期待できます。
5．業務の再配分を検討する
特定の部署や従業員に負担が集中している場合は、業務の再配分を検討しましょう。過度な負担にストレスを感じたり、長時間労働や休日出勤が常態化したりしている可能性があるからです。
ワークライフバランスが悪い状態を放置していると、体調を崩したり離職を考えたりする従業員が増えてしまいます。業務の効率化を検討する、人材を補充するなど、必要な対策を講じることが重要です。
6．ある程度の裁量を与える
人材の流出を防止するためには、ある程度の裁量を与えることも大切です。自由に仕事をこなすことができず、指示に従わなければならない状況では、やりがいを感じられず熱意を失ってしまうケースもあります。
とくに優秀な人材は、自分の考えをもって仕事をしたいと考える傾向があるため、ある程度の裁量を与えておくとよいでしょう。
人が辞めていく原因を把握して適切な対策を講じよう
今回は、人が辞めていく会社に共通する特徴や、人材の流出を防止するための方法を紹介しました。人材が定着しないと、社内にノウハウを蓄積できないだけではなく、情報が流出したり企業のイメージが悪くなったりする可能性もあります。ブラック企業のような印象をもたれてしまい、採用活動がうまく進まなくなるケースもあるでしょう。
人材の流出を防ぐためには、退職者が出続ける原因を把握したうえで適切な対策を講じる必要があります。評価制度を見直す、キャリアアップを支援するなど、状況に応じた対策により従業員の定着を図りましょう。
