採用活動において、候補者の経歴や身辺に詐称がないかを調査するバックグラウンドチェックは、企業防衛や採用の精度を高めるのに役立ちます。
しかし、バックグラウンドチェックにかかる期間が長くなってしまうと、候補者にネガティブな印象を与える可能性があるほか、採用活動に影響が出ることもあるでしょう。そのため、バックグラウンドチェックを実施する際には、調査にかかる期間や流れを事前に把握しておくことが大切です。
この記事では、バックグラウンドチェックの所要期間や具体的な調査の流れを解説します。
バックグラウンドチェックにかかる期間

バックグラウンドチェックにかかる日数は調査方法や内容によって変動するため、調査を実施する目的やスケジュールに合わせて、選考に支障のない調査を行う必要があります。
ここでは調査方法によって異なる所要期間について解説します。
1.自社で調査を行う場合
自社でバックグラウンドチェックを行う場合の調査日数は、企業によってさまざまです。SNSの確認など、インターネット上で実施できる簡易的な調査であれば、1〜2日程度で終わるでしょう。
しかし、学歴や経歴の調査では、候補者に対して証拠書類の提出を求めたり、第三者へのヒアリングを行ったりするのに時間を要するため、少なくとも2〜3週間、場合によってはそれ以上かかることもあります。自社での体制が整っていない場合、調査に大幅な時間を要し、採用活動に影響を及ぼす恐れもあるため注意が必要です。
2.専門の調査会社へ依頼する場合
専門の調査会社へ調査を依頼する場合、委託先や調査内容によって多少の変動はあるものの、数日から1週間程度で調査結果を受け取れるケースが多いでしょう。また、破産歴や反社会的勢力との関わりといった、自社で調査することが難しい項目についても調査を依頼できます。そのため、専門的かつスピーディに調査を進められます。
調査会社の実績や調査項目から自社に合った委託先を吟味することで、選考プロセスに影響を与えることなくバックグラウンドチェックを実施できるでしょう。
3.リファレンスチェックに置き換える場合
リファレンスチェックとは、採用候補者の人物像や実績をもとに、自社に合う人物かどうかを判断する調査のことです。前職の上司や同僚を対象にヒアリングを行い、書類や面接だけではわかりかねる候補者の人柄や働きぶりを確認します。
対面や電話で調査を行う場合、対象者との日程調整に時間を要し、調査に1〜2週間程かかってしまうケースもあります。しかし、オンライン上で完結できるリファレンスチェックサービスを利用すれば2〜3日程度で調査が完了することもあるため、自社の手間も省くことが可能です。
バックグラウンドチェックを実施する目的は異なるものの、選考において自社が調査しておきたい内容にリファレンスチェックが合っていれば代替してもよいでしょう。
バックグラウンドチェックを実施するベストタイミングは?

バックグラウンドチェックは、内定前に実施するのがベストタイミングといえます。ここでは、内定前に実施するべき理由について解説します。
内定を出す前に実施するのが基本
バックグラウンドチェックは、内定前のタイミングで実施するのが最適です。次項でも解説しますが、内定後や入社後にバックグラウンドチェックを行い、虚偽の申告や経歴詐称が発覚した場合でも、内定取り消しや解雇につなげることは簡単ではありません。
また選考の初期段階では候補者が多く調査に時間がかかるほか、調査会社に依頼する際の費用もかさんでしまいます。候補者の志望度が低い場合、選考を辞退されてしまうリスクもあるでしょう。以上のような理由から、バックグラウンドチェックは最終面接の前後に行うのが理想的です。
内定後に実施することも可能?
内定は、法的に労働契約が成立している状態です。内定後にバックグラウンドチェックを実施したことで内定取り消しとなった際、その理由が客観的に合理的でない場合は解雇権濫用に該当し、不当解雇と見なされます。
重大な経歴詐称など、内定取り消しが可能な場合もありますが、妥当と認められるケースは限定的です。候補者との間でトラブルが発生する可能性もあるため、内定後の実施は避けたほうがよいでしょう。
バックグラウンドチェックを実施する流れ
ここでは、調査方法によって異なるバックグラウンドチェックの具体的な流れについて解説します。
自社による調査の流れ

バックグラウンドチェックを自社で実施する場合、一般的に以下の流れで行います。
1.候補者の同意を得る
バックグラウンドチェックでは個人情報を取り扱うため、候補者の同意を得ずに調査を実施してしまうと法律に違反する恐れがあります。事前に必ず同意を得ましょう。
2.証拠書類の提出を依頼する
学歴は卒業証明書、職歴は在籍証明書か退職証明書の提出を依頼します。
3.バックグラウンドチェックを実施する
提出書類の内容が疑わしい場合、証明書の発行機関へ直接問い合わせて事実確認を行います。職歴は源泉徴収票や雇用保険の加入歴を調べることも可能です。
また、前職へのヒアリングやインターネット・SNS検索などで候補者の人物像を調査します。
調査会社へ依頼するときの流れ
バックグラウンドチェックを調査会社へ依頼する場合、一般的に以下の流れで行います。
1.候補者の同意を得る
自社で調査を実施するときと同様に、採用企業自身が事前に候補者から同意を得る必要があるため注意しましょう。
2.調査会社に依頼する
調査内容のすり合わせを行い、調査会社にバックグラウンドチェックを依頼します。
3.バックグラウンドチェックを実施する
採用企業からの依頼をもとに、調査会社がバックグラウンドチェックを実施します。関係者へのヒアリングや証拠書類による事実確認のほか、独自のデータベースを用いて専門的な内容を調査することもあります。
4.調査結果を受領する
調査の実施後、調査結果がまとめられたレポートを調査会社から受け取ります。企業はレポートをもとに、採用の可否を判断します。

リファレンスチェックで代替するときの流れ

リファレンスチェックで代替する場合、一般的に以下の流れで行います。
1.候補者の同意を得る
バックグラウンドチェックと同様に、リファレンスチェックの実施にも候補者の同意が必要です。
2.リファレンス先を依頼する
候補者が、リファレンス先となる推薦者に調査を実施する旨の説明を行います。2つ以上のリファレンス先に依頼するケースが多いため、複数名紹介してもらうとよいでしょう。推薦者から同意を得られたら、連絡先を共有してもらいます。
3.日程調整を行う
採用企業が推薦者に連絡を取り、リファレンスチェックの日程を調整します。推薦者によっては日程調整に時間がかかり、選考に影響が出る可能性もあるため、早めの日程調整が必要です。オンラインサービスやメールを通じて回答を依頼する場合も、まずは電話で調査の説明や日程確認を行うとよいでしょう。
4.リファレンスチェックを実施する
事前に質問内容などの必要事項をまとめておき、リファレンスチェックを実施します。オンラインサービスやメールを使用する場合、質問事項と併せて回答期限も記載し、回答を依頼します。電話や対面で実施する場合、あらかじめ設定された時間内に調査を終わらせることも大切です。
5.回答結果をまとめる
リファレンスチェックで得られた情報を採用担当者で共有できるよう、報告書としてまとめ、選考の判断材料にします。

バックグラウンドチェックに関する注意点
バックグラウンドチェックを実施する際、どのようなことに注意するべきなのでしょうか。ここでは、具体的な注意点について詳しく解説します。
1.採用候補者の同意を得る

バックグラウンドチェックで得られる情報は、候補者の学歴や経歴、身辺の人間関係といった個人情報です。候補者の同意を得ずに調査を実施した場合、個人情報保護法に抵触する恐れもあります。
仮に調査の実施を拒否されても、強引に実施してはいけません。調査が必要な理由を丁寧に説明し、候補者の事情にも耳を傾け、事前に必ず同意を得てから調査を実施するようにしましょう。
2.採用候補者へかかる日数を伝えておく
バックグラウンドチェックにかかる日数は、調査方法や調査内容によって異なるため、場合によっては長期間に及ぶ可能性もあります。候補者が所要期間を知らないまま調査を進めてしまっては、選考状況に不安を抱き、企業に対する信用を失ってしまうこともあるでしょう。
あらかじめ候補者に調査にかかる日数を伝えておき、採用活動に影響を与えることなく調査を実施できるようにしましょう。また、調査体制を確立し、できるだけ短期間で調査を終えることも大切です。
3.内定取り消しは慎重に行う
先述したとおり、一般的に内定を出したタイミングで労働契約が成立するため、内定取り消しは解雇と見なされます。内定後にバックグラウンドチェックを実施し、その結果内定を取り消したい場合でも、客観的かつ合理的な理由のない内定取り消しはできません。
ただし、社会通念上相当として是認できるような重大な経歴詐称であれば、内定取り消しが認められるケースもあります。選考状況によっては、やむを得ず内定後に調査を実施する場合もあるでしょう。内定を取り消す際は、法令を遵守したうえで慎重に行うことが重要です。
選考に影響のないバックグラウンドチェックを実施しよう!
今回は、バックグラウンドチェックにかかる期間や調査の流れについて解説しました。採用リスクを回避するのに重要な役割を果たすバックグラウンドチェックは、調査方法によって数日から1ヶ月程かかることもあります。調査の長期化は、選考フローに影響を与えかねず、候補者からの信用を失ってしまうこともあるでしょう。
自社での調査体制が整っていない場合、調査会社へ依頼するかリファレンスチェックで代替して、調査にかかる期間を短縮することも大切です。自社に合った調査方法を選択し、スムーズにバックグラウンドチェックを実施できるようにしましょう。