採用活動を予算内に収めるためには、採用コストについて把握しておくことが大切です。とはいえ、人件費やインセンティブ、外部の専門業者に支払う紹介料など、さまざまな費用があるため、採用コストを把握するのは簡単ではありません
そこで今回は、採用コストの内訳や一人当たりの平均などを紹介します。採用コストを削減するポイントについても解説しますので、費用を抑えて採用活動を進めたい場合は、ぜひ参考にしてください。
採用コストとは?

採用コストとは、新しい人材を雇用するために発生する費用のことです。人材を採用するためには、求人票の作成、書類選考や面接の実施、内定後のフォロー、雇用契約の締結など、さまざまな業務を行わなければなりません。
それぞれの作業において人件費や外部の業者への委託費用が発生するため、自社の予算内に収めるためにも、採用コストがどのくらいかかるのかを把握しておくことが重要です。
採用コストと採用単価の違い
採用コストとは、採用活動にかかった費用の総額のことです。人件費や諸経費、紹介料などを合計して算出します。一方の採用単価とは、一人当たりの採用コストのことです。採用コストの総額を採用人数で割ることで算出できます。
たとえば、採用コストの総額が1,000万円で、10人採用した場合、採用単価は100万円(1,000万円/10人)と計算できます。採用コストは企業の規模や採用人数によって大きく異なるため、他社と比較する場合などは採用単価に注目するとよいでしょう。
採用コストの内訳

採用コストは、大きく内部コストと外部コストに分けられます。内部コストとは、面接や書類選考、雇用契約の締結など、社内で行う業務において発生する費用のことです。人件費の割合が高くなるケースが多いでしょう。
一方の外部コストとは、広告費や紹介料など、外部の業者へ支払う費用のことです。PR動画やWebサイトの制作など、専門スキルを要する作業ほど高額の費用が発生するため注意しましょう。以下、それぞれの内訳を紹介します。
1.内部コストの内訳
採用にかかる内部コストの代表例は以下のとおりです。
人件費
採用担当者の人件費は、最も多く発生する内部コストといえるでしょう。会社説明会の準備、面接や書類選考、応募者とのスケジュール調整、内定後のフォローなど、多くの業務を担当するため、採用人数によっては高額の人件費がかかることもあります。
採用コストを算出するうえで重要な要素となるため、人件費はしっかりと把握することが重要です。把握するのが難しい場合は、それぞれの業務にかかった時間や月給をもとに、時給換算するとよいでしょう。
交通費・宿泊費
採用担当者が本社や支社へ移動する場合は、交通費や宿泊費が発生します。遠方から来社する応募者に対して、交通費を支給するケースもあるでしょう。
また、最終面接などの場合は、経営陣や配属先の管理職が参加する場合もあります。採用コストを正確に把握するためにも、関わった従業員全員の交通費を確認しておくことが大切です。
インセンティブ
リファラル採用など、従業員からの紹介により人材を採用した場合は、インセンティブを支給するケースもあります。まったく支給しない場合は問題ありませんが、1〜10万円など、高額のインセンティブを支給する場合は忘れずに計上しましょう。
諸経費
細かな経費もできる限り正確に把握しておきましょう。具体的には、以下のような費用が挙げられます。
- 各種書類の印刷費・郵送費
- 面接時の飲食費
- 内定者フォロー・懇親会の費用
さまざまな経費を把握しておくことで、採用コストを管理する際の精度が高まります。
2.外部コストの内訳
次に外部コストの内訳について見ていきましょう。
求人情報の掲載費用
外部のメディアに自社の求人情報を掲載する場合は、登録料や応募者数に応じた料金などが発生します。料金体系はメディアによって異なりますが、外部コストのなかでも高額になりやすいため、しっかりと把握しておきましょう。
人材紹介料
人材紹介サービスを利用した場合は、紹介料を支払わなければなりません。紹介を受けた人材の入社が決まった段階で、成功報酬として支払うのが一般的です。年収によって成功報酬が異なることも多く、優秀な人材を採用すると高額の紹介料が発生するため、忘れずに確認しておきましょう。
会社説明会の開催費用
会社説明会やセミナーの開催費用、採用に関するイベントへの参加費用なども把握しておきましょう。また、パンフレットや会社案内資料の作成費用なども計上しておくことが重要です。
WebサイトやPR動画の制作費用
採用に特化したWebサイトやPR動画の制作を専門業者に依頼する場合は、その費用を計上しなければなりません。デザインや編集に高額の費用がかかるケースもあるため注意しましょう。
採用コストの平均はどのくらい?
ここでは、採用コストの平均について確認しておきましょう。就職みらい研究所による「就職白書2020」のデータ(※1)をもとに、新卒採用と中途採用に分けて解説します。
1.新卒採用における一人当たりの平均採用コスト

「就職白書2020」によると、2019年度(2020年卒)の新卒採用における一人当たりの平均採用コストは93万6,000円でした。2018年度よりも30%程度増加しており、多くの企業が新卒採用にコストをかけていることがわかります。(※1)
平均採用コストが増えている理由としては、少子高齢化による労働力不足が進み、新卒採用の競争が激化していることが挙げられます。自社の魅力をアピールして応募者数を増やす必要があるため、WebサイトやPR動画の制作、会社説明会の開催などに力を入れる企業も増えてきました。
また、採用担当者を増やし、応募者と密なコミュニケーションを取ったり、内定者のフォローを行ったりする企業も多いでしょう。その結果、人件費や広告費などが増加してきています。
2.中途採用における一人当たりの平均採用コスト
同調査によると、2019年度の中途採用における一人当たりの平均採用コストは103万3,000円でした。2018年度と比較すると、25%程度増加しています。また、新卒採用における一人当たりの平均採用コストと比較すると、10万円程度高いことがわかります。(※1)
中途採用のコストが高くなる大きな理由は、自社が求める人材を探すのが難しいことです。新卒採用とは異なり、即戦力として活躍してくれることを期待するため、なかなか求める人材に出会えないケースもあるでしょう。その結果、採用活動が長引いてしまい、人件費などが高くなることもあります。
また、人材紹介サービスなどを利用することも採用コストが高くなる理由のひとつです。年収が高くなるほど高額の成功報酬が発生することも多いため、優秀な人材を確保するほど、採用コストの負担は大きくなります。
3.採用コストの推移
新卒採用・中途採用ともに、採用コストは以下のように増加傾向にあります。(※1)
新卒採用
2018年度 | 2019年度 | |
---|---|---|
一人当たりの平均採用コスト | 71万5,000円 | 93万6,000円 |
中途採用
2018年度 | 2019年度 | |
---|---|---|
一人当たりの平均採用コスト | 83万円 | 103万3,000円 |
前述のとおり、企業間の採用競争が激しくなっていることに伴い、採用コストも増えてきています。ただし、上記のような数値ばかりに注目し、自社の採用計画を見失わないようにしましょう。
もちろん、コストをかけて優秀な人材を確保することは重要ですが、自社の予算や採用の方向性などを確認することも大切です。無駄な費用を使うことは避け、自社の状況にマッチした方法で採用活動を進めましょう。
採用コストを削減するためのポイント
採用コストを削減するためには、自社でどのような費用が発生しているかを把握することが重要です。そのうえで、採用プロセスの見直しや新しい採用手法の実施を進めましょう。以下、コスト削減のポイントについて詳しく解説します。
1.現状の採用コストを把握する
まずは自社で発生している採用コストを確認しましょう。現状を把握しなければ、どの部分のコストを削減すべきなのかを検討することができません。人件費や交通費などの内部コスト、広告費や紹介料などの外部コストをできるだけ詳しく把握しておくことが大切です。
また、誰が採用活動に関わっているのか、どのようなサービスを利用しているか、どのようなプロセスで進めているのか、といったポイントも把握しておきましょう。採用活動の全貌や課題を明確にしておくことで、より効果的なコスト削減対策を立案できます。
2.母集団形成に力を入れる
採用コストを削減するためには、母集団形成を意識するとよいでしょう。採用活動における母集団形成とは、自社に興味をもつ応募者を集めることです。
母集団形成を進めるときは、自社が求める人材像を明確にしなければなりません。とにかく多数の応募者を集めたいと考えることが多いかもしれませんが、自社の価値観に合わない人材や、必要なスキルを保有していない人材を集めても意味がありません。
ミスマッチによるモチベーションの低下や早期離職などが発生し、採用コストや教育コストが無駄になってしまう可能性もあります。まずはターゲットを明確にしたうえで、適切なアプローチ方法を検討することが重要です。
3.既存の自社サイトを有効活用する

すでに自社のWebサイトやブログなどを保有している場合は、うまく活用することで採用コストの削減を図りましょう。たとえば、求人情報に関するページを追加する、従業員のインタビューを掲載するなどの方法が挙げられます。自社サイトを活用すれば、新しいWebサイトを立ち上げるのと比較して、費用を抑えて採用活動を進められるでしょう。
また、掲載できる情報の制限がないことや、自由なタイミングで更新できることなども大きなメリットです。外部のメディアに求人情報を掲載する場合、文字数や画像枚数などが制限されるケースもあります。さまざまな制約により、自社の魅力を伝えきれないこともあるでしょう。一方、自社サイトを活用すれば自由な内容を投稿できるため、求職者に対する効果的なアピールが可能です。
4.リファラル採用を取り入れる
リファラル採用を取り入れることも採用コストを削減する方法のひとつです。リファラル採用とは、従業員から知人や友人を紹介してもらう採用手法を指します。リファラル採用の制度を整えたり、従業員に対してインセンティブを支払ったりすることは必要ですが、外部の人材紹介サービスを利用するより費用を抑えられるでしょう。
ミスマッチによる早期離職を防ぎやすいこともリファラル採用の特徴です。従業員から仕事のやりがいや職場の雰囲気を詳しく聞いたうえで選考に進んでもらえるため、入社後に社内に馴染みやすくなります。その結果、定着率を高めることができ、採用コストが無駄になることを防げるでしょう。
5.採用後のフォローを徹底する
採用コストを削減するためには、採用後のフォローを徹底することも重要です。内定を辞退されてしまうと、せっかくかけた時間とコストが無駄になってしまいます。内定者と密にコミュニケーションを取ったり、内定者同士の懇親会を開催したりして、確実に入社してもらえるようにフォローしていきましょう。
また、入社後のコミュニケーションや研修を充実させることも大切です。新しく入社した従業員は、職場の人間関係に馴染めるか、しっかりと仕事をこなしていけるかなど、さまざまな不安を抱えています。
とくに新卒採用の従業員は不安を感じていることが多いため、研修会を開催したりOJTを実施したりして、早期に活躍してもらえるようフォローしていきましょう。適切なフォローにより定着率を高めていくことで、新しい人材を確保する必要性が減り、結果として採用コストの削減にもつながります。
適切な採用コストをかけて優秀な人材を確保しよう!
今回は、採用コストの内訳や一人当たりの平均などを紹介しました。自社の採用コストが適正かどうか判断するときは、他社の平均値と比較してみるとよいでしょう。
また、採用コストを削減したい場合は、自社サイトを有効活用したり、リファラル採用を取り入れたりするのがおすすめです。内定辞退や早期離職を防ぐために、採用後や入社後のフォローを徹底する必要もあります。せっかくかけた時間やコストが無駄にならないよう、新しく入社する従業員をフォローしていきましょう。
(※1)就職みらい研究所「就職白書2020」
https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2020/06/hakusyo2020_01-48_up-1.pdf